作者が書きたいもの、読者が読みたいもの

 　「星界の紋章」の作者でもある森岡浩之氏の新作。『夢のまた夢　決戦！大坂の陣』が出ていたので購入して読了。
 　いや、本屋で初見時、作者名に気がつかず、スルーしてしまったんです。
 　ＹＡ系のイラストにこの題名でしょう。気がつきませんでした。内容はといえば平行世界の大坂の陣。パパ秀吉が秀頼に少しきつい遺言を残し、淀殿が少し賢かった世界。
 　うーむ。実に、実にamazonのレビューが理解できます。このレビューをなさったバグ氏、過去のレビューを見ると横山信義氏の最近の作品に対するレビューには深く頷ける所が多々あったり、映画の趣味が同じだったり（私は残念ながらこんなに買えませんが）しますが、題名買いなさったんでしょうねえ。この本。
 　『秀頼が大阪城に籠城することになってからの事務的手続きばかりが延々と描かれていて』とありますが、それが作者やりたかったんでしょう。『夢の樹が接げたなら』で名詞しかない言語を、『ズーク』で普通名詞が１コしかない言語を、『星界』シリーズでゼロからアーヴ語を作り上げた作者ですよ。一番書きたかったのはその事務手続きだったと愚考します。たぶん、喜々として書かれていたんじゃあないでしょうか。
 　ま、そのあたりが大好きな私としては大変面白い話だったのですが、しかし、題名通りに仮想戦記だと思って買ったら、そりゃあ腹も立つでしょうねえ。これ、題名売らんかなの出版社が悪かったんじゃないかと思うんですが。
 　しかし、このシステムマチックな戦記物。続きは出るんでしょうか？（望み薄ですね）